約4,200人
この数字が何を指しているかわかりますか?
4,200人という数字は毎年夢を抱いて入職してきた新人看護師の1年未満での退職人数となっています。
*この数字は、2017年厚生労働省調査データの新卒全体の退職率と看護師国家試験の合格数毎年55,000人前後という数字から割り出した平均値となります。
4,200人って驚きです。
これだけの人数が毎年1年未満で病院を去っているんです。
このひとりひとりの新人看護師は、皆すべからく泥を飲むような努力を重ねてやっと看護師になったのに、1年以内にその夢が絶たれていることになります。
この現実は非常に寂しいことです。
でもなぜ多くの新人看護師は1年未満に辞めていってしまうのか?
これを考えていくと、1年目看護師は中堅看護師やベテラン看護師とはまた違った悩みに直面していることに気付きました。
1年目看護師はプリセプターの対応で辞めたいと思うか決まります。
プリセプターとは、新人看護師につく指導担当(先輩看護師)のことです。
以下はプリセプターのどんな対応に、1年目看護師が辞めたいと思うのかを載せておきます。
根拠・エビデンスという言葉の突っ込みに辟易してる
私が新人のとき、いや学校にいた時から、この「根拠」という言葉を腐るほど聞きました。
看護師という職業柄、科学的根拠に基づいて看護をするというのはわかります。
ですが、、、うるせえぇんですよね。(心の声ですよ)
何かしようとするごとに「根拠は?」「エビデンスは?」って何度も聞かれるんですよね。
気になるなら、「〇〇に気を付けてね」とか毎回毎回聞かずに言ってくれればいいのに。
根拠が大切なのはわかるんですが、多用されると正直辟易しますよね。
ちょっとした質問ですら「わかりません、調べてください」と昔のsiri並みの返答しか返ってこない
これもよくありますよね。
何を質問しても、「調べてください」なんですよね。
考えることが大切であり、その癖をつけさせたいのはわかるんですが、事前に調べてきてわからないことまで「調べてください」と返されてはやりようがないんですよね。
記憶の定着って、自分で調べることだけではなく、聞いたシチュエーションなどで強く残ることもあるので、毎回「調べてください」の答えは正直間違えています。
それこそ考えていない無責任な返答ですよね。
人に教えるなら教え方も「調べておいてもらいたい」ですね。
先輩看護師が「はじめてのおつかい」のスタッフばりに自分の行動を遠くから見ている
新人の頃プリセプターの目ってほんと怖いんですよね。
新人って、当然思いもよらぬ行動もするので、心配なのはわかります。
でも某番組のお母さんやスタッフなみに遠くから見ているのはやめてもらいたいです。
そんなに気になるなら一緒に来ればいいんじゃない?
ほんとに「ドレミファだいじょーぶ♪」が聞こえてきそうです。
プリセプターと話すと動悸がする
これは正直笑えません。
プリセプターとの会話で動悸がするほどになったら、絶対パンク寸前なので、上司か話せる仲間に「辛い」状況を伝えてください。
正直ここまで症状が出ているようだと、プリセプターを変えてもらうか、異動願いを出すか、休職か退職するかしか方法はないと思います。
プリセプターと顔を合わせる同じ病棟では、いつまでも動悸は治りませんので絶対相談するようにしてください。
取り返しがつかなくなる前にお願いします。
客観的に見ても、明らかに差別的な対応をされている
毎年病棟に配属される新人看護師は一人ではないことが多いです。
その中で働いていると、他の新人とは「何か扱いが違う」といった差別的な対応を感じるときがあります。
私自身の体験談ですが、私がいないところで他の新人にルンバールの介助方法を見学させて、次の日、私にルンバールの介助がついている時などです。
当然一度も見たことないので、「できません」というと怒られるみたいな感じです。
新人の時って、先輩看護師とのパワーバランスがとんでもなく開いていて、仲間になってくれる人も少ないので、フルボッコ状態なんですよね。
自分はやってないのに、何故か自分が怒られる
これも新人にはよくあります。
例えば、物を置きっぱなしにしてたり、床頭台を片付けていなかったりした際に、たまたまそこに居合わせると、何故か新人が怒られるんですよね。
「自分じゃない」とも言えないので謝るしかないんですよね。
たとえ「自分じゃない」といっても、「自分じゃないとそのままにするんだ?そんな無責任なんだ?」と返されるんですよね。
これはもう罠を張ってたとしか思えませんよね。
先輩に教わったことをしたら、上司にこっぴどく怒られる罠
ときに先輩看護師に教えてもらったことを実践していると、上司に怒られることがあります。
「そんな手技駄目だよ!何学んできたのよ!」とか言われるんですよね。
でも名前は決して出せないので、またフルボッコ確定です。
こういう状況に陥ると、ただ目を瞑り上を向くことしかできないんですよね。
朝の情報収集や記録中でも、先輩看護師が近づいてきたら笑顔でPCを譲らないといけない
1年目って、とにかく肩身が狭いもんです。
情報をとるのも、PCの台数が限られているので、先輩看護師の出勤前までにとらないとならないんですよね。
で、先輩が近づいてきたら、笑顔で「どうぞ」とか言って席を立たないといけないんですよね。
これ、朝の情報収集でよくみられる光景です。
対策は、ナースコールや電話の近くのPCで情報をとることです。(ナースコール近くや電話近くは対応しなければならない為人気がありません)
1年目看護師は病院の多忙さや暗黙のルールに辞めたいと思っています。
勤務時間は嘘という罠(勤務1時間以上前から情報収集が必要)
1年目の看護師はとにかくやることや覚えることが多いです。
情報収集も1年目は、どこから情報をとればいいのかわからないので時間が掛かります。
そのため、1時間以上前から出勤して、情報をとることもままあります。
先輩看護師がきたらその場をどかなければならないほど立場も弱いです。(PCが使えなくなる)
こうした様々な理由があることから、1年目の新人看護師は寝癖ついたままでも朝早い出勤を求められます。
看護師の抱く病院側への疑問
いったいどこの勤務時間を表記しているの?
情報収集って業務ではないの?あれだけ「情報集した!?」と冷たい言葉を投げ掛けてくるなら、業務時間に行うべきことだと思うんですけどね。
帰宅は常に夜
1年目看護師は朝早く夜は遅いです。
まず業務中に記録ができません。
できないのは、まだ業務をうまくこなせないことが多分にあります。
記録においても、どうやって書けばいいのか正解がわからないので、先輩の書き方などを見ながら書きます。
こうしたこともあり、時間はあっという間に立ち、帰るころには夜なんてことは多々あります。
中には、日勤なのに、夜中まで残っていた新人を何人か見たこともあります。
そういった人たちは皆3年後には残っていませんでした。
休憩・仮眠の表記はあるが全然とれない罠
これも看護師にはあるあるの話です。
病院は多忙を極めるため、休憩が設定してあっても、ほとんど休憩をとれずに午後も働くなんてことはざらにあります。
さらにこれが1年目看護師となると尚更で、水分を一口飲みに戻れる時間があればよいなんて時も間々あります。
夜勤の仮眠時間においても、同じようなことがいえます。
ただでさえ人数が少ないなか、沢山の輸液管理や服薬管理、ナースコール対応、記録にチェック作業などなど山ほど行うことがあり、仮眠なんて全然とれません。
完全な罠です。
看護師の抱く病院側への疑問
なぜ仮眠をとれないのに仮眠時間を設定しているの?「ない」ものを「ある」というのは嘘であり、一番信頼を失う行動なんですけどね。平然と行う病院側は不思議でなりません。
日勤で遅くまでいたのに、何故か夜中も働いている罠(3交代)
正式名称は「日深詐欺」という罠になります。
やることの多い病院などによっては、過酷な夜勤を考えて、3交代(日勤、準夜、深夜)というシフトを敷いていることがあります。
しかしこれって、看護師のことを考えているわけではなくて、もっとも過酷に働かせるための罠なんですよね。
まず3交代のシフトが敷かれている病院では、シフトの構成上、日勤→深夜、準夜→準夜→準夜、深夜→深夜→深夜などといった常軌を逸した勤務形態が出現します。
日勤→深夜においては、日勤業務を定刻17時ころに終えて、1時くらいに勤務する形になります。
インターバルが8時間となっています。
これ実際に働いたことのある看護師なら気付くと思いますが、そもそも日勤業務が17時の定刻に終わりません。
更に深夜も9時には100%終わらないです。絶対記録で残ります。午後まで残る人もいます。
さらに言うと、当然情報をとる為に定刻の30分以上前には出勤しなければなりません。
1年目ならもっと早いです。
家が遠いと、この通常設定されている8時間のインターバルが更に短くなります。
わかります?家に着いてから3~4時間くらいしか休めないんです。
1年目や家が遠い人などは、病院に泊まる人もいます。
こうなると、常に病院にいる感覚に陥ります。
立派な社畜の誕生です。
朝は身体が重く憂鬱
1年目の看護師というのは、ただでさえ緊張しているため、病院にいるだけで、毒の沼地の如く体力が削られていきます。
そのうえ、業務内容は多忙を極めるため、毎日そのような病院で働いていると、家に帰っても心拍が下がらず緊張状態がつくりだされます。
医療的にいうと交感神経が常に優位の状態です。
そんな状態で朝を迎えると、「またあの過酷な戦場へ行くのか、、、」「またあの先輩の顔を見ないといけないのか、、、」などと考えてしまい、重く胸がざわつく憂鬱な気分になります。
この状態が長く続くとぼんやりしていた退職の2文字がくっきりと見えるようになります。
ナースコールやモニター音が家に帰っても聞こえる
病棟は様々な声や音が飛び交います。
まさに戦場のようです。
こんな戦場では、本来リラックスできる基地のはずのナースステーションへ戻っても、ナースコール音やモニター音が止まらずに鳴り響きます。
このような状態が長く続くと、家に帰っても、なんだか聞こえてきます。
あのメロディ仕様のナースコール音やアラーム音になったときのモニター音が。
目を瞑っても、耳を塞いでも聞こえてくるので、情緒が不安定になります。
誰より動くことが求められる
1年目では、戦闘機の撃墜数の如く、ナースコールをとることを自然と求められます。
これが少ないと、先輩看護師から煙たがられます。
先輩看護師がナースコールに対して「私が行くからいいよー」と笑顔で言っていても騙されてはいけません。
休憩中に「あの新人全然ナースコールを取りに行かない」と確実に言われています。
なので、誰よりも早くにこの音に反応することが求められます。
東大王・井沢拓司並みの反応をしないといけません。
なので記録をしていても、意識はナースコール盤やモニター画像へ注力を注がれるので、当然捗りません。というか記録などできません。
勤務終了後はサービス残業がオプションで必ずついてくる罠
1年目看護師は、記録などその時にしなくても大丈夫なことはどんどん後回しにしないといけません。
優先順位というやつです。
しかし後回しにするのをいいことに、その他の業務が定刻ぎりぎりまで組まれているんですよね。
よって記録は定刻終了後となります。
ナースコールだけは定刻終了とともにとらなくても良くなる暗黙のルールがあるので、記録に集中できるようになります。
そしてこの定刻後の記録の時間は、嬉しいことにサービスとなっています。
無料で記録を行わせてもらえるので、日勤中1行も記録をできていない1年目看護師は涙目で記録ができます。
タイムプレッシャーが半端ない
1年目看護師というのは、知識だけでなく、経験や技術が圧倒的に不足しています。
その中でOPE出しや検査出しなどがついていると、ルートを確保しなければならないので、非常に焦ります。
急変時は当然更に焦ります。
1年目看護師は、こうしたタイムプレッシャーを強く受けるので、日ごろから知識・技術の向上だけではなく、常に先輩へ頭を下げて頼めるように、常にこうべを垂れておかないといけません。
安月給なのに忙しすぎて、お金が使えず貯金が貯まる罠
多忙な病院に勤めていると、あまりの忙しさに、家に帰るのも夜遅く、夜勤があれば昼間は寝てるなどの関係で、ショッピングなどにお金を使う機会が必然的に減ります。
こうなると家と仕事の往復しかしなくなるので、勝手にお金が溜まっていきます。
これは良いことなのか悪いことなのか迷うことがありますが、自分の意志でお金を貯めているわけではないので、完全に悪です。
1年目看護師はベテラン看護師に比べて圧倒的に自由な時間が少ないので、この罠にかかりやすいです。
1年目看護師が直面する辞めたい理由は新人特有の人間関係と過酷な労働がほとんど
以下は医労連の調査による看護師が仕事を辞めたいと思う退職理由になっています。
*出典:「医労連」による2017年看護職員の労働実態調査結果報告より抜粋
これは看護師全世代のアンケート結果になっており、人手不足や給料についての不満が上位をしめていることわかります。
しかし、先の理由などから、新人の辞めたい理由としては、以下のようなことがいえると思います。
新人看護師の辞めたい理由!
★人間関係(特にプリセプター)
★人手不足で仕事がきつい(過酷な労働環境)
が辞めたい理由の大部分になっていると推察できます。
特に新人においては、プリセプターとの関係性というのは、非常に大切です。
ここでその病院で勤めていくか、2~3年で辞めるかのジャッジが下されています。
因みに3年目までに退職している看護師の割合は4割といわれています。
辞めたいときに1年目看護師のとるべき手段は3つ
堪え難きを堪える(残留)
天皇の玉音放送のような答えになってしまいますが、とにかく耐えて耐えて自分に知識や技術、経験がつくのを努力して待ちます。
昔はこうして立派な看護師が育っていました。
でも看護師の中には、新人の時に虐められて立派に育ったから、自分も新人を虐めて育てるみたいな間違った考え方になる可能性も秘めているので、気を付けなければなりません。
ただ苦しい時を一緒に過ごせる同僚や相談に乗ってくれる先輩看護師などもいるなら、堪え難きを耐えることは少しは楽になります。
堪え難きを耐えるに必要なことは良好な人間関係の構築が大切になります。
1年目看護師が仕事を続けていくか見極めるポイント!
- 相談のできる同僚がいるか
- 相談のできる先輩看護師がいるか
- 自分を守ってくれる病院環境か(患者同様、従業員のことも本当に考えている)
が、残留に必要な条件となります。
辞めるという選択
1年目看護師を続けていく上において、上記が守れていないブラックな病院で働き続けると、遅かれ早かれ退職という選択をすることになるか、抗うことを諦めた社畜が誕生します。
ブラックな病院では、反旗を翻すようなことは、医者でもできませんので、正直時間の無駄となります。
ブラックな病院では、社畜になるのが、生き残る術でもあります。
こうした働き方に不安や疑問をもつ方やある程度貯蓄のある方は退職を選択してもよいと思います。というより退職した方が良いでしょう。
退職という響きは、一見看護師として働くことから逃げているように見えるかもしれませんが、人生においては逃げではありません。
余力のあるうちに退職することは、新たな道を模索するエネルギーとしても使えるからです。
転職するという選択
これは、辞めるという選択に比べて一歩進んだ選択になります。
自分が長く勤める環境において、今勤める病院が向かないと判断できたのなら、早期退職・転職するというのは何も悪いことではありません。
1年目看護師は、「早期退職・転職する」ということに対して、次の病院側に「根性がない」とマイナスな印象をもたれてしまうのかと不安に思うかもしれませんが、そんなことはありません。
病院側にとって、まだ何色にも染まることのできる1年目看護師というのは、病院側にとっても貴重な人材(人財)として考えてくれます。
病院側にとって、他の病院に染まりきったベテラン看護師の方が最初は即戦力として使えても後々扱いづらくなるものです。
以下に1年目看護師でも気軽に相談・転職のできる転職サイトを紹介しておきます。
筆者も退職中はお世話になりました。
今の病院がどうにもこうにも辛くて、相談できる同僚も少ない方は、登録して相談してみるのも一つの解決手段となります。
看護のお仕事は転職会社の大手であり相談者の状況・希望を聞いた後、沢山の仕事を紹介してもらえます。
さいごに
1年目看護師というのは、中堅看護師などに比べて、圧倒的に大変で、嘔気をもよおすほどストレスも溜まるものです。
せっかく自分の選んだ病院、初めて働いた病院なので、そこがベストな職場であったら最高ですが、そうもいかないのが現実です。
1年目看護師だと思い悩んでしまうことも多いとは思いますが、日本には病院数は8,000件以上、クリニックや訪問看護や社会福祉施設なども含めると、170,000件以上の膨大な職場があります。
どんな方にも自分に合った職場は必ずあるので、悩み相談だけでもしてみることをおすすめします。