どうしようもない不安を抑え込んだとき、脳のどこが働いたかわかりますか?
答えは後述します。
ところで、皆さんはマインドフルネスって何か聞いたことありますか?
何となく知っている人もいるとは思います。
マインドフルネスとは今の自分の気持ちに気付くことです。
人間関係においては、自分の気持ちに気付くことで、相手に対して間違った言葉の選択をしなくなります。
結果、マインドフルネスは人間関係を円滑に導く為の手法の一つとなります。
結局、辞めたい悩みは人間関係が9割
業務が多忙でやめたい・・・
でも
仲間が良かったら忙しくても辞めたい気持ちは薄まりませんか?
夜勤が辛い・・・
でも
気の合う仲間となら辛さも乗り越えられませんか?
データによると職場の悩みは人間関係が9割といわれています。
「嫌われる勇気」で有名なアルフレッド・アドラーも「つまるところ人間の悩みは全て人間関係に行き着く」と記述しています。
『円滑な人間関係の構築は、職場の悩み全てを解決する』といっても過言ではないのです。
マインドフルネスはGoogleやアップル、Facebook、ゴールドマンサックス、マッキンゼー&カンパニーなど挙げればきりがないほど大企業で行われている手法です。
こういったITがメインの会社ですらマインドフルネスを行っているのです。
「心のケア」にもっとも近い我々看護師がマインドフルネスを行わずに、「心のケア」と離れていそうなIT分野で広まっているというのは何だか驚きではありませんか?
そんなマインドフルネスについて今から詳しく説明していきたいと思います。
マインドフルネスとは「今ここ」を意識して生きること
結論から先に言うと、
マインドフルネスとは「今ここ」を生きることで、ネガティブな感情を手放し、その感情を癒すことです。
「今ここ」とは言葉の通りで、「今この瞬間、自分がこの場所にいる」ということを意識することです。
マインドフルネスは元々、仏教に伝わる『禅』から来ています。
『禅』の中にあった考え方が、海を渡って欧米で心理療法として取り入れられて、「これはいいぞ」ということで、日本へ逆輸入されてはいってきたものになります。
マインドフルネス=禅
なので、元々、日本にもある考え方になりますので、受け入れやすいと思います。
でもどうやって「いまここ」を意識すればいいのでしょうか?
呼吸への意識は自分の感情をリアルタイムに知ることができる
マインドフルネスが「いま」に意識を向けることはわかっても、実際にどうやって意識を向けるのでしょうか?
いきなり答えを伝えると
自分の呼吸です。
マインドフルネスとは主に呼吸へ意識を向けることで、今の自分の思考や感情にリアルタイムに気付くことができます。
これは他人の呼吸や時計を見ても駄目です。
自分の呼吸へ意識を向けることで、自分自身の感情に気付くことができるんです。
相手に怒られたり、仕事に失敗して悲観にくれたり、逆に怒ったりしている時というのは、当然意識が悲観や怒りの感情へ向いていて、我を忘れていることが多いです。
意識を感情が覆ってしまっている状態です。
脳科学的には前頭葉より偏桃体が強く反応している状態です。
皆さんの中にも感情に任せて暴言を言ってしまった経験はあると思います。
ですが、マインドフルネスを身に付けていると、悲観や怒りの感情が沸いた際に、「今自分は悲しんでいる」「今自分は怒っている」という現在の自分の状況を客観視して気付くことができるようになります。
客観的に自身の現在の感情に気付くことで、悲観や怒りの感情を和らげることができるのです。
長時間キレて暴言を言っていると、興奮の熱量が下がってきて自分を客観視することがあります。(怒りの感情は6秒でなくなるといわれています)
マインドフルネスを理解していれば、キレて怒る前に自分の感情の変化に意識を向けることができます。
意識を向けることができると、いちいちキレたりすることがなくなります。
結果、相手も傷つけないで済みます。
我を忘れて友達・家族に思ってもないことを言ってしまった。。。
といったことがなくなるのです。
自身の感情に気付いて、客観視して捉えることができると、人間関係を悪くしてしまう言葉の選択が少なくなります。
マインドフルネスの効果をコロナ期間中に実施したデータ【PRTIMES】によると
総じて心を落ち着ける効果があることがわかると思います。
正しい呼吸の型は?(あれのことではありません)
マインドフルネスが役に立つことがわかっても、どうやって感情に飲み込まれる前に自身の感情に気付くのか?
これは時間のとれる時などに、
目を瞑って呼吸をすることに意識を向ける【吸う1:吐く2の割合】
呼吸を繰り返して、「今ここにいる」ことに意識が向いたら目を開ける
これを繰り返し行ってください。
繰り返し行うことで、感情の波が訪れた際に意識と感情とを分けて考えることができるようになります。
科学的には吐く時間を多くすることで、副交感神経が優位になります。
実際の例
上司に叱られる
自身の強い感情の変化【怒り・悲しみ・不安】=交感神経優位な状態
目を瞑って呼吸をすることに意識を向ける【吸う1:吐く2の割合】=副交感神経優位な状態
「今ここにいる」ことに意識が傾いたら目を開ける
今まで抱いていた感情と意識を切り離して考え、「今ここ」だけに集中する
今まで抱いていた負の感情が落ち着く
どうでしょう?
落ち着きましたか?
この状態で相手に話しかけてみてください。
きっと間違った言葉の選択はしなくなります。
それでも「まだ相手が何を考えているかわからなくて不安」と言う方はこの先まで読み進めてください。
マインドフルネスを使って不安と向き合う方法
次にマインドフルネスを用いた不安という感情への対処方法をお伝えします。
先ほど同様、『今ここにいる』ことに集中し、副交感神経を優位にすることで、落ち着いて不安に向き合うことができます。
そして次にその不安を整理することで、問題に対して冷静に考えることができるようになります。
不安を自分の課題と他人の課題に分ける方法
アドラー心理学にある『課題の分離』という方法を使います。
アドラーはそもそも『不安は自分の課題と他人の課題がごちゃごちゃになっているから起こっている』と語っています。
そのため、まず自分の悩んでいるいくつもの悩みがどの課題なのかを分ける必要があります。
悩みの原因が
『自分が解決すべき課題』なのか
『他者が解決すべき課題』なのか
に分けて考えます。
『自分が解決すべき課題』とは自分の努力次第でコントロールできる課題
『他者が解決すべき課題』とは自分の努力でどうにもならない・コントロールできない課題
ということです。
例をあげてみましょう。
- プリセプターが冷たい態度・言葉遣いをとるのではないかという不安
- プリセプターが自分だけ厳しく接してくるのではないかという不安
- プリセプターに自分の意見を伝えたら否定されるのではないかという不安
- プリセプターが自分のことを上司へどのように伝えているのか不安
- 情報の取り忘れがあるのではないかという不安
- イベント時までにルート確保などの準備が間に合わないのではないかという不安
- 物の場所がわからない・覚えられないという不安
- 医療物品と医療物品の名前が一致しているかわからない不安
- 同じことを聞くと怒られるのではないかという不安
- 人の名前と顔が一致していない不安
- 知識が追い付かない不安
- 略語を使われて言っている意味が分からない不安
これは恥ずかしいですが『筆者が新人看護師として働き始めた時に抱いた悩み』です。
これを自己で解決するべきものか他者が解決するものかを課題別に分けてみました。
プリセプターが冷たい態度・言葉遣いをとるのではないかという不安
⇒⇒⇒『自分が解決すべき課題』はあるが最後は『他者が解決すべき課題』
冷たい態度をとるか・とらないかは他者が決めることなので他者課題となります。
でもまずは自分が『冷たい態度をとられる原因は何か』を考えて解決することです。これをしないで待っていても冷たい態度が解決することはありません。自分がすべきことをした後はもうそれは他者課題となります。
プリセプターが自分だけ厳しく接してくるのではないかという不安
⇒⇒⇒『他者が解決すべき課題』
どう扱うのかの判断は他者が決めるので他者課題となります。
自分ができることとしては、自分が考える気持ちの良い態度で接することだけです。
プリセプターに自分の意見を伝えたら否定されるのではないかという不安
⇒⇒⇒『自分が解決すべき課題』はあるが最後は『他者が解決すべき課題』
自分が正しく伝えても判断するのは最後は相手なので他者課題となります。
自分ができることとしては、しっかり調べて 根拠に基づいた自分の意見を言うだけです。
プリセプターが自分のことを上司へどのように伝えているのか不安
⇒⇒⇒『他者が解決すべき課題』
自分がどう心配しても他者が行う行動なので他者課題です。
情報の取り忘れがあるのではないかという不安
⇒⇒⇒『自分が解決すべき課題』
自分の注意力で解決できるので自己課題です。
イベント時までにルート確保などの準備が間に合わないのではないかという不安
⇒⇒⇒『自分が解決すべき課題』
自分の知識・技術で解決できる課題なので自己課題となります。
物の場所がわからない・覚えられないという不安
⇒⇒⇒『自分が解決すべき課題』
覚えるのは自分なので自己課題となります。
医療物品と医療物品の名前が一致しているかわからない不安
⇒⇒⇒『自分が解決すべき課題』
覚えるのは自分なので自己課題となります。
同じことを聞くと怒られるのではないかという不安
⇒⇒⇒『自分が解決すべき課題』はあるが最後は『他者が解決すべき課題』
怒るか・怒らないかは他者が決めることなので他者課題となります。ただ同じことを聞かないように覚えることは自己課題となります。
人の名前と顔が一致していない不安
⇒⇒⇒『自分が解決すべき課題』
覚えるのは自分なので自己課題となります。
知識が追い付かない不安
⇒⇒⇒『自分が解決すべき課題』
知識をつけるのは自分なので自己課題となります。
略語を使われて言っている意味が分からない不安
⇒⇒⇒『自分が解決すべき課題』
略語を調べるのも聞くのも自己課題です。
以上のように不安に対して、自分ができること、できないことを考えます。
結構役に立つと思います。
悩みが沢山ある看護師さんは、実際に悩みを書き出して課題別に分けしてみるとよいでしょう。
悩み解決の糸口が見えてくるかもしれません。
覚えておいてほしいことは、解決できるのは『自分が解決すべき課題』だけということです。
『他者が解決すべき課題』は自分では解決できないからです。
だから『他者が解決すべき課題』に悩んでも時間の無駄ということになります。
自分は『自分が解決すべき課題』にだけ目を向ければいいのです。
この方法は自分の悩みの整理ができて、「目を向ける悩み」と「目を向けてもしょうがない悩み」を分けることができるので、非常に有効な方法です。
特に「目を向けてもしょうがない悩み」に気づくことができるのは特筆ものです。
筆者自身も解決できない他者課題に無駄な時間を費やすことがなくなりました。
今現在プリセプターや上司、先輩に悩んでいる新米看護師さんは参考にしてもらえると良いと思います。
マインドフルネスの欠点
しかしマインドフルネスにも欠点があります。
それは自身の怒りや悲観などの感情がコントロールできたとしても、あくまで自己防衛であり、相手の感情を変えれるわけではないことです。
勿論、自分が怒らないことで相手の感情も落ち着くことはあります。
でも、そうでないことの方が多いです。
マインドフルネスができても問題そのもの(他者の課題)が解決するわけではないということです。
そのため、またその相手と再会した際に、相手の方から以前と変わらないストレスをぶつけられる可能性があります。
これでは人間関係を解決できたとはいえません。
そこでマインドフルネスを効果的にするには更に傾聴とアサーションを理解していく必要があります。
この傾聴とアサーションをしっかり使いこなすことで、人間関係の大幅な改善が期待できます。
マインドフルネスを効果的なものにするには傾聴とアサーションが必要!
傾聴とは
傾聴とはその名の通り、「耳を傾けて聞く」ということです。
少し補足すると「相手を理解したいと思って、耳を傾けて聞くこと」です。
どんな相手でも、話を聞いてもらって嫌な思いはしません。それは苦手な相手でも同じです。
傾聴することで、話し手は「自分の話を聞いてもらえた」という満足感を得ることができますし、聞き手であるあなたにも苦手な相手の気持ちに受容と共感を感じることができるかもしれません。
なので傾聴は相手だけでなく、自分にも変化を与える可能性があるツールといえます。
しかし傾聴を実施する上で注意点もあります。
一見同意はいいのではないかと思ってしまいますが、同意をするということは、話し手の意見が正しいと聞き手が判断していることになります。
これでは同意を得られない場面では批判されてしまうのではないかという不安を話し手に抱かせてしまいます。
なので、あくまで耳を傾けて聞くという姿勢が大切になります。
【傾聴の例】




といったように適度にオウム返しするとテンポよく話が進みやすいです。
話している側は「話を聞いてもらえてる」という満足感が高くなります。
次にアサーションを説明していきたいと思います。
アサーションとは
アサーションとは自分も相手も大切にする、正直な自己表現になります。
このスキルを用いるとお互い気持ちの良いコミュニケーションをとることができます。
ホリエモンがツイッターなどで良く炎上するのはアサーションがうまくできていないことが一因にあると思います。
まぁ不特定多数の人間を誰も傷つけずになんてことは無理でしょうが、言葉選びをもう少しできればあそこまで炎上はしなかったでしょう。
ではアサーションの例をあげてみましょう。
アサーションを使わないやり取り

勝った負けたではないですが、気持ちの動き方としては、WIN ぴーこ、LOSE やーこといった形になると思います。
1の例はぴーこの申し出に対して、やーこは内心は嫌だと思っているのに引き受けているので、ぴーこは満足していますが、やーこは不満足です。

気持ちの上で、WIN やーこ、LOSE ぴーこという形になります。
2の例はぴーこの申し出に対して、やーこは拒否することに成功しましたが、ぴーこはやーこに強い口調で断られたので、良い思いはしませんので、やーこは満足、ぴーこは不満足の結果になります。
アサーションを使って断る場合。


3の例ではぴーこの申し出に対して、やーこも相手を傷つけない形で断りをいれて、ぴーこもその断りを受け入れる反応を示しているので、両者 WIN。WIN。です。
以上のようにアサーションを用いることで、お互いにとって気持ちの良いコミュニケーションをとることができます。こうしたアサーションを続けることで、良い人間関係を構築することができます。
では今までの例と比較してアサーションを使った例は具体的にどこが違うのでしょうか?
1の例では断り切れていないので論外です。なので2の例と3の例を比較してみると次のポイントが違うことに気付きます。
答えは2の例では断る主語が「あなた」になっているのに対して、3の例では主語が「わたし」になっています。
2の例
3の例
このように主語を「私は」にして言葉をつくると、相手の気持ちに配慮した返答になります。
またアサーションを使った返しでは
(今)(私は)やらなければいけないことがあって、手伝ってあげれないんだよね
と、「今ここ」の客観的事実も入っているのもわかります。
アサーションは、いくつかのポイントを入れることで、誰でも効果的に使うことができます。
- 私を主語に私の感情を語る。
- 自分への直接の影響を述べる。
- 今ここの客観的事実だけを語る。
まとめ
まとめると人間関係において、この3つの方法は以下の効果があります。
ここから言えることは、人間関係の悩みの改善には、自分自身がストレスへの捉え方を変えて、相手を良く理解しようするマインドが大切だと言えます。
自分がこうした態度を繰り返すことで、次第に相手の態度も変わってきます。
相手を力づくで変えなくても、ただ自分が変わればいいのです。