有料老人ホームってどんな人が利用しているか想像できますか?
私も勤めるまでは、シルクハット被って杖もった人やジュエリーを身にまとったミセスがいると想像していました。
ここでは私のように有料老人ホームに興味はあるけれど、どんなところか想像もつかない看護師さんへ向けて書いてあります。
また私自身の経験だけでなく、看護師仲間数人からも得た情報を基に記載していますので、参考にしてもらえたらと思います。
因みに私の勤めている有料老人ホームにはシルクハットもジュエリーを体中に着けている人はいませんでした。
有料老人ホームでの看護師の仕事内容
看護師の主な仕事内容
★ 健康管理・相談服薬管理
★ 経管栄養
★ 胃ろう
★ 吸引
★ インスリン注射
★ IVH
★ 褥瘡ケア
★ その他処置
★ 緊急・救急対応など
介護付き有料老人ホームでの看護師の一日のおおまかな流れ
08:30 出勤
09:00 昨夜の情報共有、排便表の確認、服薬準備
10:00 バイタル測定(その日の状態チェックや入浴可否の判断)、排便処置など
10:30 状態に変化のあった利用者をドクターへ連絡・報告
11:30 昼食介助(胃ろう管理、インスリン、服薬介助、食事状況の見守り)、経管栄養者の管理、吸引
12:30 休憩
15:00 入浴後の処置、レクリエーションの見守りなど
15:30 排便表や処置表の作成
16:00 ドクターへ状況報告、処置の指示受け、服薬準備
16:30 夜勤者への情報共有
17:30 退勤
有料老人ホームと特別養護老人ホームとの看護師の仕事内容の違い
施設により違いますが、介護付き有料老人ホームなどは特別養護老人ホームと仕事内容に大きな違いはありません。
ただ決定的に違うのは、医療的ケアの量の違いです。特養の方が明らかに医療的ケアが多いです。
特別養護老人ホーム | 有料老人ホーム | |
医療的ケアの量 | 多い | 少ない |
理由は、特別養護老人ホームは介護保険の介護度が3以上でなければ入れないのに対して、有料老人ホームは要支援から入ることができる(自立で入れる施設もあります)からです。(有料老人ホームは施設の基準により入居条件は違いますが、特養より平均介護度は確実に低いです。)
そもそも平均介護度が有料老人ホームだと介護度2~3なのに対して、特別養護老人ホームは介護度4.3付近(経営上この付近)であり、利用者のADLが全然違います。
特別養護老人ホーム | 有料老人ホーム | |
患者の状態 | 認知症、寝たきり患者、見守り必須な患者が多い | 軽度認知症、動作に見守りの必要な患者、見守りの必要のない患者 |
介護付き有料老人ホームと特養養護老人ホームで働いた経験のある私が言わせてもらうと、胃ろうの人数や褥瘡ケアの人数などが特養の方が多いです。

有料老人ホームの種類とその違いはなに?
有料老人ホームは民間が経営しているので、施設により入居条件も入居金もサービス内容も全然違い、タイプにより3種類に分類されています。
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- 健康型有料老人ホーム
有料老人ホームにはこの3種類があります。
上から順に介護度が下がっていくと思って構いません。
介護付有料老人ホーム【介護度やや高い】
有料老人ホーム全体の約40%近くが介護付き有料老人ホームとなっています。
食事・排泄介助などの身体介護などを必要としている利用者も利用することができます。自立の方も入居できますが、要支援~要介護認定を受けている高齢者が殆どです。
利用者の要介護度は2~3レベルくらいが多いので、特別養護老人ホームよりは介助度は低めです。
介護を必要としている利用者はその施設の介護スタッフが行います。
住宅型有料老人ホーム【介護度低い】
有料老人ホーム全体の約60%近くが住宅型有料老人ホームとなっています。
買い物や食事などの生活支援を必要としている方が利用できます。訪問介護やデイサービスなどが併設されていることが多く、必要に応じてサービスを受けることができます。要介護のある方から無い方まで混在しています。
介護を必要としている利用者は訪問看護を利用しているところが多いです。
健康型有料老人ホーム【介護ほぼなし】
有料老人ホーム全体の0.2%ほどしか施設数がなく、看護師の求人を見たことがありません。
要介護のない健康な方が入所しています。主に家事・食事サポートがついているホームとなります。スポーツジムや温泉などが併設されているホテルのようなところもあります。健康型という名前の通り、要介護状態になった際は退所しなければなりません。
三つの有料老人ホームの違いと特徴
*横にスクロールできます。
介護付き有料老人ホーム | 住宅型有料老人ホーム | 健康型有料老人ホーム | |
入居条件 | 自立~要介護5まで
*施設により異なる |
自立~要介護5まで
*施設により異なる |
自立 |
配置基準 | 入居者1~30人(看護師1名)、31~80人(2名)、81~130人(3名) | 基準なし(施設により異なる) | 基準なし(施設により異なる) |
サービス内容 | 介護(一部介助)を必要としている利用者が多い | 自立から生活支援が殆ど | 自立 |
看護師の主な看護 | 健康管理、食事・排泄・入浴介助、胃ろう管理、服薬管理、下剤調整、緊急時対応 | 健康管理、生活支援、食事・排泄・入浴一部介助 | 健康管理 |
看護師の夜勤の有無 | なし(施設により異なる) | あり(施設により異なる) | ー |
有料老人ホームで働く看護師のメリットとデメリット
有料老人ホームで働くメリット
病棟より落ち着いて働くことができる
一般病棟のように急患が入ったり、容体が急変したりするケースが圧倒的に少ないので、一般病院よりは落ち着いて過ごすことができます。
ライフスタイルにあった施設を選ぶことができる
有料老人ホームは全国に 件ある為、
そのため、入職希望者は個人のライフスタイルに合わせた施設を選択することができます。
残業がない
イレギュラーなことが殆ど起こらないので、基本残業なしで仕事をあがることができます。
一般病院のように当たり前にサービス残業を何時間も強いられることはないので、これは大きなメリットといえます。
レクや外出などあり楽しい
病院は治療するところですが、有料老人ホームは余生を穏やかに過ごすところです。
そのため、レクリエーションや外出などの企画も多く存在します。
そうした場面では、利用者の笑顔など自然に見ることができて、こちらも癒され自然と笑顔になれます。
病院にはない醍醐味だといえます。
有料老人ホームで働くデメリット
マナーが問われる
有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護に指定されていません。
そのため、わざわざ高い入居費用を払って入って入所する方や高い月額料金を支払って利用する方も大勢います。
生活に余裕のある利用者も多く、ホテルと同じ感覚で利用する方もいるので、マナーには一段と厳しかったりもします。
責任感を問われる
有料老人ホームなどは、系列のクリニックや病院などに医者がいて、施設内には医者が不在なことが多いです。
そのため、入浴可否の判断や通院の判断、DM時のお菓子を食べていいかの判断などスタッフや家族より看護師に問われることがあります。
もちろんドクターが来るまで判断を待ってもらったり、他スタッフへ確認もできますが、こうした判断をする場面は一般病院より多く出くわすことになるので、適切に判断できる知識や技術が必要となります。
休みが少ない
これは有料老人ホームだけの話ではないのですが、一般に介護施設では年間休日105~115日程度のところが多いです。病院では年間休日115日以上はあるところは多くありますので、年間10日休みが違うと体感的にも結構わかるもので疲れが抜けきらなかったりもします。
有料老人ホームの給与条件などが良くても、年間の休みが少ないケースもあるので、入職前にしっかり確認することをお勧めします。
先端医療に疎くなる
有料老人ホームなど施設に勤めると、どうしても大学病院などの先端医療に触れることのできる病院と違い、知識が古くなりがちです。
そのため、自信で進んで研修に参加するなど新しい知識を得ようと行動することが大切になります。
有料老人ホームに向いている看護師はこういう人
小さいお子さんのいる看護師
小さいお子さんのいるママさん看護師さんにとって、時間通りに帰宅できることはとても大切です。
理由は保育園の迎えがあったり、夕飯を用意しなければならないからです。
有料老人ホームはこうした小さなお子さんのいる看護師さんにとてもお勧めです。
理由は
- 残業が殆どない為、延長保育することなく迎えに行けること
- 病棟ほど疲れないので、夕飯を作れる気力・体力があること
以上から小さいお子さんのいるママさん看護師にとって、有料老人ホームがお勧めできる理由となります。
ブランクのある看護師
有料老人ホームは看護師の仕事内容を振り返ってもらえればわかりますが、基本的な看護が多いです。
そのため、ブランクがあっても、病棟より早く知識や技術を思い出すことができて、現場に馴染むことができます。
そのため、復帰しやすさに関しては、明らかに有料老人ホームの方が、病棟看護師より早くひとりの戦力として現場復帰できます。
病院勤務に燃え尽きた看護師
病院のプレッシャーやサービス残業も厭わない働き方で、燃え尽きて鬱のような症状が出てしまう看護師は結構いらっしゃいます。
こうした看護師は当然休息が必要です。
しかし事情により休息ができずに働き続けないといけないこともあります。
有料老人ホームは前述通り、病棟のような多忙さはないうえ、気持ちに余裕のある優しい利用者さんも多いので、とても仕事がしやすいです。
経験の多い看護師
有料老人ホームの仕事内容は、病棟経験のある看護師なら一度は触れたことのある業務内容が多いです。
そのため、病棟経験の多い看護師は比較的スムーズに業務を進めることができます。
福祉に興味のある看護師
有料老人ホームは治療するところでなく、穏やかに余生を過ごすところのため、積極的な延命治療や点滴管理、過度な食事制限などは行いません。
そのため、こうした生き方を受け入れられる看護観をお持ちの方なら有料老人ホームは合います。
逆にどんなことをしてでも延命させる精神をお持ちの看護師さんには、有料老人ホームに勤めることは歯がゆいことの連続かもしれません。
有料老人ホームで役に立つ看護師の資格
医療環境管理士
医療現場で必要な感染対策の知識は、医者が常駐していない有料老人ホームなどでは、役に立つ資格といえます。
有料老人ホームを選ぶ際に注意する6つのこと
夜勤あり・なし
介護付き有料老人ホームは「日勤のみ」勤務もありますが、住宅型有料老人ホームは多くが「夜勤あり」での募集のため、入職する前にしっかり確認が必要となります。
利用者の平均介護度
利用者の介護度によって、看護師の仕事内容が違います。
介護度が平均が4付近だと、特別養護老人ホームに似た仕事内容になると考えてもいいでしょう。
ただ介護に全般に関しては介護士さんが行ってくれるので、看護の関りとしては、前述した看護の仕事内容を参照してください。
因みに要介護度による利用者のADLは以下のようになります。
*横にスクロールできます。
自立 | 日常生活は自分で行うことができる。介護保険での介護サービスは必要なし。 |
要支援1 | 日常生活はほぼ自分でできるが、要介護状態予防のために少し支援が必要。 |
要支援2 | 日常生活に支援が必要だが、要介護に至らずに機能が改善する可能性が高い。 |
要介護1 | 立ち上がりや歩行が不安定。日常の中で、排泄や入浴などに部分的な介助が必要。 |
要介護2 | 自力での立ち上がりや歩行が困難。排泄、入浴などに一部または全介助が必要。 |
要介護3 | 立ち上がりや歩行などが自力ではできない。日常においても排泄、入浴、衣類の着脱など全面的な介助が必要。 |
要介護4 | 排泄、入浴、衣服の着脱など日常生活の全般において全面的な介助が必要。 |
要介護5 | 日常生活全般において、全面的な介助が必要であり、意思の伝達も困難。 |
参考:ニチイの介護サイトより
利用者の数
入職前に利用者の人数も把握しておくと良いと思います。
人数が多いと当然その分だけ観察量も上がってくるので、負担となってきます。
できれば入職前に入居者の数も把握しておくこと良いと思います。
給料
有料老人ホームは民間企業が運営しており、企業によって給料にばらつきがあります。
年収440万のところもあれば年収500万円ほど貰えるところもあります。
440万と500万では60万も差があり、月ベースで5万円ほど違うことにもなります。
5万円違えば結構生活レベルが代わるので、給料は大切な評価指標となります。
休日数
休日は前述したように105日のところもあれば、125日以上あるところもあります。
休日も20日も差があれば、一日1万5千としても、30万円以上の経済的に差があることになります。
また体感として年間105日の職場というのは、疲れも溜まりやすく、生活スタイルが仕事と職場の往復になりがちです。
個人的には年間120日以上の休日数の職場はしっかり休めて家庭にも時間を使えるのでお勧めです。
福利厚生
有料老人ホームは民間企業の運営のため、企業規模により福利厚生に差が結構あります。
高級有料老人ホームなどでは、住宅手当や資格支援制度だけでなく、社員持ち株があったり、系列企業のホテル割引などがあったりします。
また労働組合があるところもあり、社員が会社に対して対等に権利を主張できる環境が整っていたりしています。
多くの介護施設からあなたにぴったりの介護施設を見つけるには?
有料老人ホームへの登録にはナース人材バンクと看護roo!がおすすめです。
私は、大手で求人数の多いナース人材バンク派ですが、看護roo!も満足いく求人を紹介してくれると思います。
因みにハローワークは以下の記事にもあるようにお勧めできません。
有料老人ホームに興味をもたれた方は以下で一度探してみてください。
満足のいく仕事に就けるよう応援しています。
最後まで読んでもらいありがとうございました。
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