【退職を考えている看護師の方へ】病院を辞める前に行う退職準備は何?

あなたは物事を考えてから行う人ですか?

疲労やストレス、新たな目標などにより退職を考えている方はいると思います。

ここではそうした退職希望者が、退職時に迷うことのないように準備しておくことを説明していきたいと思います。

業務の引継ぎ

上司へ退職時期を伝えたあとは退職準備をしていくことになります。

退職準備の一つに業務の引継ぎがあります。

看護師の場合は、受け持ち患者の情報や委員会の引継ぎなど役職によって内容が違うと思います。

後任の人がスムーズに業務を遂行できるように、しっかり引継ぎ準備をすすめていかないといけません。

これを疎かにすると、残った業務を受け継ぐ仲間にとても迷惑をかけることになります。

一社会人としてしっかり行っていきましょう。

 

有休消化をどうするか

有休とは年次有給休暇といい、これは労働基準法第39条に「労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活実現にも資する」という趣旨のもと、使用者から労働者へ付与されるものになります。

以下の図の通りであり、最初の発生要件としては「6ヶ月以上継続勤務し、且つ全労働日の8割以上労働した方に付与」される労働者の権利になります。

 

継続勤務年数 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年~
法定最低付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

 

行使期間は2年間になります。2年間を過ぎると取得年次順に有休は消滅します。

また有休は法律上当然に労働者に生ずる権利であり、労働者の請求をもって初めて生ずるものではありません。

有休の使用に際し使用者(雇用者)の許可や承認は不要であり、そのような観念を容れる余地そのものがないものになります。

使用者(雇用者)にできるのは時季変更権の行使のみであり、労働者の有給理由による休暇の有無を判断する権利はありません。

ただ使用者が労働者から有休の請求がない限り、それを行使しなくても違反の責は負いませんので、使用者自身で有休の残日数などを把握しておくことが必要になります。

このことから退職時、有休を捨てる必要はありませんので、使用する時期はどうあれ、しっかり残日数を確認して権利を行使するようにしましょう。

 

 

 

健康保険をどうするか(退職後1か月~休養予定の方)

退職期間を作らずに転職する場合はあまり気にする必要はありませんが、1か月でも休む場合はどうやって支払っていくかを決めなければなりません。

医療保険に関しては今までの病院で任意継続(最長2年間)として健康保険を継続するか、国民健康保険に切り替えるか、扶養に入るかの3択になります。

 

退職後の選択

保険料の有無
健康保険を任意継続 かかる
国民健康保険に加入 かかる
扶養に入る かからない

 

保険の切替中に病気で病院などに掛かった際、一時的に全額自己負担になりますので注意してください。

健康保険と国民健康保険の違いは保険料の違いと傷病手当などの有無になります。

以下がその違いになります。

また、退職後、健康保険を任意継続した場合、会社の折半部分がなくなり、全額自己負担になってしまうことは知っておくべきポイントです。

健康保険を任意継続するか国保にするかは各個人の家族状況などを含めて判断する必要があります。

 

健康保険の任意継続と国民健康保険の違い

  健康保険(社保)を任意継続 国民健康保険(国保)
被保険者 会社員、元会社員 無職、主婦や自営業者
保険者 全国健康保険協会、健康保険組合 市区町村、国民健康保険組合
保険料負担 会社との折半がなくなり全額自己負担 個人
保険料 扶養者の保険料は不要 均等割額という加入数分の負担が必要
扶養制度 あり なし
傷病手当金 あり なし
出産手当金 あり なし
任意継続の期間 最長2年間

任意継続を希望する場合は、退職日より20日以内に協会けんぽなどの団体で手続きを行う必要があります。期間中に手続きを行わなかった場合は国民健康保険に加入することになります。

 

健康保険証について

退職時に健康保険証は雇用先へ返却します。

正確には病院へ返却された保険証を病院側が健康保険組合へ返します。

退職後5日以内に返却しないといけないので、退職翌日には返すようにしましょう。

新しい健康保険証は再就職した際にもらえます。

新しい職場が決まっているがまだ保険証が手元になく必要な場合は『健康保険被保険者資格証明書』を発行してもらえば健康保険証の替わりとして使うことができます。

 

年金制度はどうなるのか(退職後1か月~休養予定の方)

病院などに勤めていた場合、厚生年金に加入していると思いますが、退職すると、退職日の翌日より国民年金に切り替えなければなりません。

そのまま別の病院などへ入職する場合はそのまま厚生年金が引き継がれますが、一時的にでも働かない期間が出る場合は自身で国民年金の手続きを行う必要があります。

 

国民年金への切り替えについて

  • 手続き場所:市町村役場の年金窓口
  • 必要書類:本人確認書類、資格喪失証明書

 

ちなみに健康保険の任意継続のようなものはありませんが、国民年金には免除申請といったものがあります。

利用する場合は上記書類に加えて、雇用保険の書類も必要になります。

わからない方は近くの市町村役場へ相談してみると良いと思います。

 

また退職後に家族の厚生年金に扶養として入るという選択もあります。(第3号被保険者)

扶養だと保険料は掛かりませんが、厚生年金の2階建て部分は適応されません。

 

退職後の選択

保険料の有無
国民年金 かかる
扶養に入る(厚生年金の第3号被保険者) かからない

 

 

住宅ローンやクレジットカードの作成

退職をすると、今まで勤めていた病院の就業年数がリセットされるので、今までの信用がなくなります。

なので住宅ローンを組もうと思っている方やクレジットカードなどを作成したい方は、退職前の信用力がある状態で申し込みをしておくことをお勧めします。

ただ看護師は現状引く手あまたの職業であり、公務員並みに信用度の高い職業でもあることから、再就職すれば就業年数が少なくても住宅ローンやクレジットカードを作成できたりします。

 

 

休職期間をつくらず転職したい人がしておくべきこと

何より行っておくべきことは転職活動です。

転職活動に関しては以下記事を参考にしてもらえると良いと思います。

 

知らないと損する!20代看護師が転職で失敗した5つの理由と転職成功への方法とは?

 

休職期間を1か月も空けずに常勤扱いで転職をする方は社保関係ですることは殆どありません。

健康保険証を病院へ返却するくらいです。

 

 

雇用保険の失業保険を利用したい方

これは退職前にすることではないのですが、退職後に暫く休養を考えているような方は、失業保険の利用も視野にいれて考えておいても良いと思います。

失業保険はハローワークで行う手続きになります。受給要件は二つあり、以下のもになります。

 

失業保険の受給要件

  1. 雇用保険の加入期間が1年以上あること。(就業期間が1年以上あること)
  2. 働く意思と能力があること。(病気や怪我がなく、ハローワークに求職者登録すること)

 

失業保険には下記の退職理由により、それぞれ失業保険の給付がわけられます。

  • 一般受給資格者(自己都合退職)
  • 特定受給資格者(会社都合のリストラなど)
  • 特定理由離職者(病気や介護などの理由)

 

自己都合退職の方が失業給付金を受け取れる期間は、今までの加入期間により違います。内容は以下の通りです。

一般受給資格者の所定給付日数

被保険者期間 6ヶ月以上1年未満 1年以上5年未満 5年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上
全年齢 90日 90日 120日 150日

 

なお一般受給資格者は給付付き制限があり、受給開始までに100日前後掛かるので、早めの手続きをお勧めします。

給付金額(日額)は今までもらっていた給料(ボーナスを含まない退職前6ヶ月の総支給)により違います。

自動計算ツール(KE!SAN)といった便利なツールがありますので、それを利用すれば、自身が現在どのくらいの給付を受け取れるのか把握できると思います。

 

特定受給資格者と特定理由離職者の所定給付日数

1年未満(被保険者期間) 1~5年未満 5~10年未満 10~20年未満 20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日
30~34歳 90日 120日 180日 210日 240日
35~44歳 90日 150日 180日 240日 270日
45~59歳 90日 180日 240日 270日 330日
60~64歳 90日 150日 180日 210日 240日

 

参考:ハロワークインターネットサービス(基本手当の所定給付日数)より

 

失業保険を利用する場合の注意点

ここで失業保険を利用する場合、注意しておく点があります。

それは失業保険の申請期間が退職後から1年間ではなく、失業保険の受給期間が退職後から1年間までだという点です。

これは退職日より1年以内に受け取りを完了しないと、給付期間中でも給付が打ち切られてしまうという意味です。以下に例を示します。

 

10年以上の雇用保険加入者が自己都合退職し、退職後8ヶ月経過した後、失業保険の手続きを行った場合

受給期間120日

給付開始まで100日前後

受給開始時期は早くても退職後11か月目より

退職後11か月目 30日分の受け取り

12か月目 60日分の受け取り

終了

退職後1年経過した為、最大120日分の給付を受け取れるところ、残り60日分残して給付終了

 

10年以上の雇用保険加入者が自己都合退職し、退職後1ヶ月経過した後、失業保険の手続きを行った場合

受給期間120日給付開始まで100日前後受給開始時期は早くても退職後4か月目より

退職後4か月目 30日分の受け取り

5か月目 60日分の受け取り

6ヶ月目 90日分の受け取り

7ヶ月目 120日分の受け取り

退職後1年以内なので満額受け取ることができます

 

以上の例から個人により違いますが、失業保険の受給を考えている方は、最低でも半年以内に申請開始した方がよさそうです。

失業保険の受給期間は、失業後1年間なので、それまでにもらいきらないと損。

 

最後に退職金をもらう前に行っておくことを書いておきます。知らない方も多いと思いますが、退職金は基本的に課税されます。しかし下記にある通り、優遇措置もあるので、それを理解して、実施しておくことが、退職金をもらう際のポイントになります。

 

退職金をもらう前に行うこと

退職金は勤務先に所定の続きを行っておくことで、源泉徴収で課税関係が終了しますので、原則確定申告をする必要はありません。

退職金は通常その支払いを受ける時に、所得税及び復興特別所得税や住民税が源泉徴収又は特別徴収されます。

退職金は、長年の勤労に対する報償的給与として一時的に支払われるものであることなどから、退職所得控除を設けたり、他の所得と分離して課税されるなど、税負担が軽くなるよう配慮されています。

なお退職所得についても源泉徴収票が交付されます。以下は源泉徴収額の計算方法になります。

所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額の計算方法(平成29年分)

引用元:国税庁のホームページより

退職所得控除額と勤続年数の計算式

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数
20年超 800万円+70万円×(勤続年数ー20年)

*上記の計算式によって、80万円未満の場合は、退職所得控除額は80万円になります。

 

平成29年分所得税の税額表(求める税額=A×B-C)

A:課税退職所得金額 B:税率 C:控除額
1,000円から1,949,000円まで 5%  0円
1,950,000円から3,299,000円 10% 97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

 

源泉徴収と確定申告

退職金の支払いを受ける時までに、【退職所得の受給に関する申告書】を退職金の支払者(勤め先)に提出している方は、源泉徴収だけで所得税及び復興特別所得税の課税関係が終了(分離課税)するので、原則として確定申告をする必要はありません。

退職所得の受給に関する申告書】を提出していない方は、退職金の収入金額から一律20.42%の所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されますので、確定申告で精算する必要があります。

なお退職金の金額は勤務年数や職場により違いますので、退職前に病院の賃金規則を確認したり、経理の方に確認しておくことをお勧めします。なお退職金は概ね勤続年数が10年を超えると退職金の増加率が加速していきます。

また裏技的なものとして、退職前6ヶ月の基本給が退職金に関係するような計算方法の病院で、常勤より非常勤の方が時給が高いような場合、退職6ヶ月前に常勤から非常勤へ変更するなどして退職金を引き上げることなどもできます。なので、退職前には退職金制度をしっかり把握しておくことをお勧めします。

以上、まとめると退職前に絶対行っておくべきことは以下になります。

退職前にしておくべきこと

  • 退職前に退職金の確認
  • 退職前に【退職所得の受給に関する申告書】を退職元(勤め先)へ提出する。

 

まとめ

退職前にできること、退職後にはできないことを知り、できることは実行しておくことで、病院をわだかまりなく辞めることができ、退職期間を安心して過ごすことができます。またこういった準備による退職は、その後の転職においてもスムーズにつなげることができるので、ぜひ上記内容を理解し、実践してみることをお勧めします。

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